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エルスウェーニョの新着情報やお知らせ、
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新春セッション 1月3日(日) 12時から17時2015.12.30

横浜「エルスウェーニョ」新春セッション
●日時:2016年1月3日(日)12時~17時
●場所:横浜「エルスウェーニョ」
    https://elsueno.jp/
●MC:1000円
●ハウスメンバー:
 高橋雅人(p)
 伊藤聡(b)
 保科久穂(ds)
 佐藤太(tp)

※参加者が多い場合、楽器によっては演奏回数が少なくなってしまうことがあります。何卒ご了承願います。

※エルスウェーニョ https://elsueno.jp/
  神奈川県横浜市西区南幸2-1-22 相鉄ムービル3F
 ライブスケジュール http://www.asahi-net.or.jp/~md2n-iwks/U3.htm
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エル・スウェーニョ(横浜駅ジャズ&イタリアンレストラン) ビッキーとユーリのグルメ探訪(十二)2015.12.28

十二話 大晦日
 
12月31日だ。
今年も今日で終わりだ。
今年もいろいろなことがあった。
来年もいろいろなことがあるだろう。
ビッキーとユーリは、2015年の閉めくくりとして、横浜駅イタリアン・レストラン・エル・スウェーニョに出かけた。
今年の終わりは、ここですごして年を越して新年をむかえよう。
大晦日の日は、エル・スウェーニョは静かだった。
ジャズの演奏もない。
江野は一人バーカウンターの中に立っていた。
「こんばんわ」
「やあ、こんばんわ。いらっしゃい」
二人はカウンターに並んで座った。
バーカウンターは大きな一枚板でできていて、木の木目が自然を感じさせる。
こんな板をつくるのにどれくらいの太さの木が必要なんだろう。
頭の上には太い丸太の梁が渡っている。
これも大きな木だ。
「なんにしようかな?』
「カクテルにしよう」
「ジンリッキー」
「私、キールがいいわ」
カクテルの種類は無限にある。
お酒、飲み物を合わせるとカクテルになる。
そのうち、スタンダードと呼ばれるものは、製法、分量が決まっていて、どこのバーでも通じる。基本的には、ベースと呼ばれる強いお酒にリキュールと呼ばれる果実や香草をつけ込んだお酒と果汁を合わせる。
べ0巣のお酒はジン、ウォッカ、テキーラ、ラムが中心で、ジンはオランダ、イギリス。ウォッカはロシア。テキーラはメキシコ。ラムは南米、西インド諸島のお酒で、それぞれにまたたくさんの種類ががある。
リキュールはくだものや香草や木の根など、香りのお酒で修道院などでひっそりとつくられていた。
種類は修道院の数だけある。
カクテルにはロングカクテルとショートカクテルがあり、ロングカクテルは細長いグラスに氷を入れ、ベースのお酒と果汁、それをソーダやトニックウォーターなどで割る。
ショートカクテルは小さな三角形の足つきのグラスに注ぐ。
だいたいはシェイカーに材料と氷を入れ、シャカシャカと振ってからグラスに注ぐが、マティーニなどはミキシンググラスで混ぜてから注ぐ。
カクテルの中で最も有名である。
マティーニはジンとドライベルモットの二種類だけを合わせるが、その比率と合わせかたで千差万別のマティーニがつくられ、世界中で愛飲されている。
ビッキーの注文したジンリッキーは、ロンググラスでジンをソーダで割り、ライムを絞る。
キールはカシスのリキュールを白ワインで割る。
もともとは、すっぱすぎる白ワインを飲みやすくするためであった。
ユーリにはシャンパンで割って、キールロワイヤルにしてくれた。
「今年ももう終わりね」
と、ユーリが江野に話しかける。
「そうですね。もうおわっちゃいますねぇ。ユーリちゃんははたちのこの一年、いいことがいっぱいあったでしょう」
「いっぱいあったわ。このお店にも来られたし。」
江野は笑顔でユーリを見ている。
かわいい子だと思う。
「ウイスキーがたくさんあるんですね」
と、ビッキーが話しかける。
ウイスキーも種類が豊富だ。
再世はアイルランドで造られていた。
アイリッシュ・ブッシュミルズのボトルには1606年と刻印されている。
やがてスコットランドに広がる。
スコッチと呼ばれる。
スコッチウイスキーには、普通の幾種類かのモルトを混ぜ合わせてつくったもののほかにシングルモルトと呼ばれるものがある。
そのウイスキー固有の単一のモルト(大麦酵母)を使うのだ。
シングルモルトのスコッチには、海に浮かぶアイラ島でつくられるものと本土のスペイ川の流域でつくられるものが主力で、両者は非常に異なる味だ。
アイラ島はピートと呼ばれる石炭の泥の島で、その水でつくるウイスキーは独特の香りを持ち、一種の薬品のような臭いを持つ。
このウイスキーは好き嫌いがはっきり別れる。熱狂的ファンも多い。
ラフロイグ、ボウモア、タリスカー、アードベック、ラガーブーリンなどが有名だ。
スペイサイドのウイスキーは、上流のハイランド、下流のローランド共、優雅な香りと味のウイスキーだ。
グレーンというのは谷のことで、リベット谷のグレーンリベット、マッカランも有名だ。
ブレンデットでは、バランタインやシーバスリーガル、カティサークなどが人気である。
18世紀の終わり頃、スコットランドからアメリカ、ケンタッキーに移住したエライジャ・グレイク牧師は、アメリカ大陸原産で豊富にあったトウモロコシを使ってモルトをつくる。
それと蒸留してウイスキーをつくる。
焼却場にあった焼きこげのついた板で、樽をつくり、その中で貯蔵し熟成させた。
できあがったウイスk−は、木のこげた香りが香ばしく、美味であった。
バーボンウイスキーである。
グレイク牧師の作り方を踏襲し、ターキー、ハーパー、アーリーなど、たくさんのバーボンウイスキーが生まれ、世界中で飲まれている。
「ウイスキーを飲んでみようかな」
ビッキーが言い、
「何がいいですかね」
と江野に聞く。
「スコッチのシングルモルトがいいんじゃないですか。それも個性的なアイラが。」
と、江野がすすめる。
大きいグラスに丸い氷がすっぽり一個入れられ、ラガーブーリンがその上からトクトクと注がれた。
スーと空気が透き通るような香り。
ビリビリと舌に刺激が起こり、とろりと甘い味がかいま姿を見せたとたん苦味がそれを周りからおおいつくす。
それから豊かな旨味が世界に広がる。
すばらしい味だ。
自然で透明感のある味わいの奥に自然の豊穣、恵みを凝縮し、それが解き放たれて、とめどもなく広がる。
ユーリは、ビッキーがおいしそうにラガーブーリンを味わうのをながめていたが、
「私にもなにかつくってぇ」
と、江野にあまえる。
「そうですね・・・・」
江野は、カクテルグラスとシェイカーを冷蔵庫に入れ、ライムの実を半分スクーザーで押して絞った皮の内側まで絞ってはいけない。
それから、ブランデーとクリームとカカオブラウンのボトルをカウンターに並べた。
それから冷えたシェイカーをボトルの横に並べ、左手の三本の指でメジャーカップを持ち、ブランデーの栓を指で持ったままボトルを持ち、シェイカーの口もとでカップに入れたと同時にシェイカーに入れる。
目にもとまらぬ速さだ。
同じくカカオリキュール。ライム果汁。氷を三個シェイカーに入れ、バンとふたを閉めて、両手の指先でシェイカーのトップ、ボディ、底を持ち、横向きでシャカシャカシャカシャカと振る。
8の字を描くように十回くらい振ってから、冷えたカクテルグラスをユーリの前に置き、シェイカーのトップをはずして、横からグラスにゆっくりと回すように注いでくれた。
冷えたカクテルグラスのふちいっぱいのブラウン色の透明なカクテル。
表面がキラキラと輝いている。
ユーリは顔を近づけて、こぼさないようにくちびるをつけた。
すこし飲む。
「おいしいわぁ」
江野の顔を見る。ビッキーの顔も見る。
そして、グラスを持って、もう一口飲む。
「なんていうカクテル?」
「そうだね、おおみそかとでもいうかな」
江野は笑顔で答えた。
大晦日の夜も時間が過ぎてゆき、今年もあとわずかとなってきた。
もう三人しかいない。
江野はちょっとの間、厨房に入ってなにかゴソゴソとやっていたが、驚いたことに年越しソバをどんぶりで三つ持ってきた。
湯気が立っている。
「わあ、おいしそう」
「三人で食べよう」
だんだんと新年が近づいてきた。
スリー、ツー、ワン、ゼロ。
あけましておめでとう。
おめでとう。おめでとう。
今年もよろしくね。
 
(十二話 おわり)

エル・スウェーニョ(横浜駅ジャズ&イタリアンレストラン) マスター小説 第十四話 「ある日、竜馬は。」2015.12.28

マスター小説 第十四話 「ある日、竜馬は。」
 
秋山氏によると、品川宿の浮遊雲は、ある日ブラリと居酒屋へ入った。
この人は毎日遊んで暮らしている。
女の着物をきて、昼間から飲んでいる。
居酒屋の宴に数人の若者がにぎやかに飲んで気勢をあげている。
雲は隣のせいで一人でチビチビ、やっている。
「ワハハハハハ!日本の夜明けは近いぞ」
というような声が聞こえてくる。
雲は聞くとはなしに聞いている。
夜明けですかねぇ。勤皇の志士たちだろうに、どうも土佐のことばのようだ。
若者たちが出ていったあと、みると刀が置き忘れている。
雲はそれをとってみて、
「ほう、これはなかなかのもんだ。どれ、届けてあげよう」
と刀をかついで居酒屋を出た。
さっきの若者たちは、別れ別れに行ってしまったようで、その中の一人の男があき地で別の数人の男たちに囲まれていた。
男たちは刀を抜いて、その男の命をねらっている。
囲まれた男は、遠くを見る目つきで、
「やめちょけ。わし一人殺ったところで日本の大きな流れは変わらんぜよ」
佐暮派の男たちはジリジリせまってくる。
「どうしてもやるちゅうんなら」
といって、男は右手を腰に伸ばした。
ない。
刀がない。
しまった。
男はバッと逃げる。走る。走る。逃げる。逃げる。
俊足だ。
追手をまいて路地裏で、ふうーと息をつき、
「あぶないところだった」
と、一息ついたところへ
浮遊雲が来た。
「もしもし、お忘れものですよ」
と、刀を渡す。
「ありゃー、これはすまんこってす。」
と、男は破顔一気。
刀を腰にさし、
「わしは、ねらわれちょりますので失礼します」
と、頭を下げ、走り去る。
雲は、一人歩きながら思う。
「ねらわれている人が刀を忘れるもんかねぇ」
・・・・・・・・
竜馬はこういう男であった。
 
(第十四話 「ある日、竜馬は。」 おわり)

エル・スウェーニョ(横浜駅ジャズ&イタリアンレストラン) マスター小説 第十三話 少年竜馬2015.12.28

マスター小説 第十三話 少年竜馬
 
四国の急峻な山と足摺、室戸の二つの岬に囲まれた土佐は、太平洋にのみ面している。
土佐の異骨相と言う。異なる人種ということだ。
海洋狩猟民族なのだ。
中国から渡ってきた長僧我部は、土佐に王国を築き、他国から恐れられ、中央からも一目置かれた。
土佐には都を想わせる地名が多い。
桂浜、鏡川、仁淀川、物部川、御免・・・・
中央からの流刑の地であったためか。
関ヶ原の戦いに際して、長僧我部は徳川がかつとみて、家康に密使を送ったが、大阪で捕えられた。
よって、土佐に山内一豊の支配となり、上士、御士の差別ができる。
竜馬が生まれた時、背中に毛が生えていたというのは本当だ。
背中のまん中に大きく長く黒いアザがあり、生えていたのはうぶ毛だった。
うぶ毛はやがて剛毛となる。全身にほくろが散りばめられていた。
物心つくようになって、竜馬は自分の体の異常に気づいた。
他の子供達と違う。体にアザやほくろがあって、背中に毛が生えている。
まわりの好奇な目が注がれる。
いじめられることも多かった。
仲間と裸で水遊びをする時が、苦難の時であった。
それでも、子供だからみんなといっしょに遊びたい。
アザをもち、ほくろだらけ、毛だらけとみんながはやしたてる時もあった。
反面、体も丈夫で、頭もよく、人柄も暖かい子供の竜馬は友だちに人気があった。
少年竜馬は、ぼうっとしている時が多かった。
夢想癖だ。
こせこせ目の前のこともやらず、ぼうっとして、遠くを見ている。
ぼうっとして、庭のビキ翁を見ている。
「ビキ翁、おんしゃあ、まっこと、みにくいのう。たまあるが、おらん背中も毛だらけがやき。」
ビキ翁は動かない。
一日中、じっとはいつくばっていて動かない。
竜馬少年を見ている。
大勢の子供たちが鏡川で水浴びをしている。
竜馬もその中にいる。
ひねくれた年上の子供が叫んだ。
「こんできそこない、あっちゃいけ。」
みんなが竜馬を見る。
気まずい空気が流れた。
「こらあ、つまらんこついうな!」
ガキ大将がどなった。
半平太だ。
「そこんアザ、こっちゃこい。おまん、アザじゃ毛じゃちゅうて気にせんでえいじゃいか。堂々としちょらえいがやき。」
半平太は竜馬を可かわいがった。
アゴ兄い、アゴ兄いと言って竜馬はついて回った。
半平太は三日月のようにアゴがとがっていた。
・・・・・・・・
そんなわりで竜馬は水練ができなかった。
剣と水練は武士のたしなみである。
そんな竜馬を乙女姉さんが気づかった。
乙女姉さんは夜、竜馬を連れて鏡川で泳ぎを教えた。
二人とも裸である。
子供の竜馬の目に、月明かりに浮かぶ乙女姉さんの白い肌は幻想的で美しかった。
竜馬はすぐに泳ぎは上達したが、裸の乙女姉さんといっしょにいたかったので、泳げないふりをしていた。
・・・・・・・・
竜馬はビキ翁をぼうっと見ている。
「おんじゃあ、一日中じっとしちゅうがや。いったい何ばあ考えちゅうが?まっこと年中こちゃんと寝ちゅうようじゃけんど。そっでも生きちゅうんは、天のおかげがやき。たまあるかこんこまい体で何年生きちゅうがやき。」
ビキ翁は動かない。
竜馬少年を見ている。
「ブツブツブツ、この子のアザは天のしるしじゃ。天はこの子になにをさせようと?
ブツブツブツ・・・・
暗い影にもみえる。
幸せになれぬか?
ブツブツブツ・・・・」
・・・・・・・・

(第十三話 竜馬少年 おわり)

エル・スウェーニョ(横浜駅ジャズ&イタリアンレストラン) マスター小説 第十二話 おじいさんとキツネ2015.12.28

マスター小説 第十二話 おじいさんとキツネ
 
おじいさんは森に住んでいました。
白い髪、白い髭。
森の奥の小さな小屋に一人で住んでいます。
別になんといってすることはありません。
森の中で寝て起きて、また寝る毎日です。
友だちは太陽、空、雲、月、星・・・・
森の草や木、虫や動物たち。
ある時、小屋の庭にニワトリがやってきて、卵を生みました。
二羽だったのがだんだん増えて十羽になりました。
毎朝、コケコッコーと鳴いて、卵を生みます。
おじいさんは毎日一つづつ卵を食べることができます。
そうして暮らしていました。
ある晩、キツネがやってきて、ニワトリを一羽くわえてゆきました。
毎晩一羽ずつくわえてゆきます。
ニワトリはだんだん減っていきます。
二羽だけ残りました。
キツネはもう来ませんでした。
ニワトリは卵を生み、だんだん増えて、やがて十羽になりました。
おじいさんも来れて卵を食べられます。
すると、またキツネがやってきて、一羽ずつくわえてゆきます。
キツネはニワトリをくわえてゆくとき、いつもおじいさんが、自分を見ているのに気がついていました。
いちばんはじめから見られているのです。
いつおこられるかと、ヒヤヒヤ、ドキドキしていました。
でも、なにも言われません。
三日目の晩、ニワトリをくわえたキツネは、後ろからのおじいさんの視線にヒヤ汗をびっしょりかき、いたたまれなくなって、ニワトリをはなしました。
そして、おじいさんを見ました。
でも恥ずかしくて、まともに見ることができません。
おじいさんの前でうつむいて、キツネはこう言いました。
「どうして、おこらないんですか?」
「なに、ニワトリはわしのもんじゃない。神さまのもんじゃ。
お前も必要じゃろう。
それに、お前はわかっておる。
ちゃんと二羽残しておいておる。
取り尽くしてはいかん。残しておかんと。」
キツネは少し安心して、おじいさんをまともに見ることができました。
「おじいさんは、ここでなにをなさっているんで?」
「別になんにも。おまえと同じじゃ。ただ生きているだけじゃ。
いや、生かされているだけじゃ。」
キツネは帰り道、いろいろ考えました。
「生きるとは?」
でも頭がよくないので、よくわかりません。
月日がたちました。
おじいさんの小屋のニワトリは、二十羽になりました。
にぎやかです。おじいさんも卵を食べられます。
ある夜、キツネが訪ねてきました。
奥さんと子供たちもいっしょです。
奥さんはおじいさんの前で、手をついて頭を下げ、
「いつも主人がお世話になっております。これ、つまらないものですが」
といって、おみやげをさしだしました。
「これはこれは、ごていねいに。
ほう、マツタケですな。遠慮なくいただきます。」
と、おじいさん。
子供たちは庭で駆け回って遊んでいます。
楽しい夜の語らいの時もすぎ、
「それでは、そろそろおいとまします」
キツネの家族に、おじいさんはおみやげにニワトリを一羽持たせます。
「子供たちに食べさせてやれ。」
そうしてキツネたちはたまに、山のおみやげを持っておじいさんを訪ねて来てくれ、おじいさんはおみやげにニワトリを持たせます。
そのようにして暮らしてゆきました。
ニワトリは二十羽を下ることはありませんでした。
 
(第十二話 おじいさんとキツネ おわり)

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