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横浜駅イタリアン・レストラン・エル・スウェーニョのビッキーとユーリのグルメ探訪(九)2015.12.11

横浜駅イタリアン・レストラン・エル・スウェーニョのビッキーとユーリのグルメ探訪(九)

ビッキーはあるとき、ふらりと名画座に入って白黒の古い映画をみて、あまりの衝撃にしばらく椅子から立ち上がれなかった。
「ストラーダ(道)」という、古いイタリア映画だ。
その夜、ユーリと二人で横浜駅イタリアン・レストラン・エル・スウェーニョのバーカウンターの先の右の個室に座って
ワインや料理をそっちのけで熱情のままに、いかにその映画がすばらしかったかを、
ビッキーはユーリに向かってとめどもなく語るのである。
ユーリも「うんうん」と聞いていて、話の内容はともかく
このように熱いビッキーが好きなのだ。

イタリア映画は名作が多い。
「自転車泥棒」「鉄道員」など古典的名作はシーカである。
ヴィスコンティは「ベニスに死す」「山猫」「郵便配達は二度ベルを鳴らす」など。
そしてロベルト・ロッセリーニ。

ハリウッドの大女優イングリッドバーグマンは、ロッセリーニの「無防備都市」を見て、並いるハリウッドの伊達男たちや才能(監督)たちを投げ捨ててロッセリーニのもとへ走る。
バークマンはロッセリーニへ手紙を書いた。
「私の知っているイタリア語はアモーレだけです」
と。
フェデリコ・フェリーニは、「ストラーダ」でサーカスの野蛮な怪力男ザンパノと、
それに無理やり連れていかれるジェルソミーナの二人の旅と夢とそして別離を描く。
アンソニークインはすばらしい。
ハーレーの後ろに幌付き車をつけてイタリア中を旅しながら胸で鎖を切る。
大道芸を見せて投げ銭を稼ぎ、各地のイベントやサーカスを渡り歩く。
ジュリエット・マンシーナは貧しい家の娘の役でザンパノに売られるのだ。ピエロの格好をさせられザンパノに芸を仕込まれる。
二人は夫婦として各地を旅し芸を見せる。

ニーノ・ロータの音楽もすばらしい。
ジェルソミーナはトランペットで哀愁を帯びたすばらしい曲を奏でる。
いろいろな街、大きな家の結婚式、修道院、綱渡りの曲芸師。
その曲芸師といさかいがあり、ザンパノは彼を間違って殴り殺してしまう。
そしてそれがもとで、ジェルソミーナを置き去りにして逃げるザンパノ。
哀れな女。哀れな男。逃げるザンパノの姿が悲しい。

逃げる。逃げる。逃げる。

逃げても逃げても、月日がたってもたっても逃れることはできない。

老いたザンパノはある時、かつてのジェルソミーナが吹いていたあのメロディを耳にする。
そしてそのあとの彼女の消息を知る。
夜、海辺で泣き崩れる男の姿。
………

ここまできて、ビッキーは一息ついた。
赤ワインを飲んでやっと落ち着いた。
ユーリもほっとする。
ワインはイタリアの赤モンテプルチアーノ・ダブルッツォ。
超熟プロシュートもある。
ユーリはやっと生ハムをゆっくり味わうことができた。
次に運ばれてきたのは、炭火焼キッシュである。
ふんわりとふくらんだ熱々の卵。
キッシュは卵と生クリームを溶いてパイ生地でスイス産グルイエールチーズと共に焼く。
チーズは数百とも数千ともいわゆる種類がある。
チーズの歴史も古く放牧と共に人間にもたらされたであろう。
日本でも聖徳太子の時代に牛乳をにつめた「蘇」が生まれ、それを発酵させた「醍醐」がつくられたのがチーズの始まりだ。
つい最近まではチーズは各家庭の主婦の手でつくられていた。
木の桶に牛乳をいれておく。
数日するとかたまってくる。
モッツアレラという言葉は、つかみ取るという意味だ。
すこしかたまったチーズを手で掬い取ったのだ。

牛乳がイタリア南部の水牛であればブッファラになる。
すくいとったモッツアレラの後に残された水分にミルクを加えてマスカルポーネをつくる。

フレッシュなモッツァレラと麦で燃やしてアッフミカート(スモーク)すると保存がきく。
生のチーズを平たくしてしばらくおいておくと周りに白カビが生えて周りが固まってくる。
中はクリーミーだ。
カマンベールチーズである。
またはフランスブリーだ。
その白いカビを水やブランデーで洗いおとし、ある固有のカビだけを残す、ウォッシュタイプのチーズ。
青いカビの菌のついた針でチーズを突き刺して青カビを育ててつくるブルーチーズ。
あるいは生のチーズをロウの型に押し込んで水分をとる方法。
灰をまぶして水分をとる方法。
いろいろな方法がある。
水分をとって熟成させるとすこし固めチーズができる。
あるいは熱を加えてから熟成させる、ハードタイプ。
パルミジャーノ・レッジャーノはこの方法で長時間熟成させる。
材料が山羊の乳のシェーブルチーズ。
羊であればペコリーノである。
みんなそれぞれに固有の香りと味を持ち、チーズはそのままでも、料理にお菓子と用途が広い。

家庭でのチーズ作りの大敵はネズミであった。
ネズミもチーズが大好きなのである。そのうえ、人間より先に食べてしまう。
いろいろ工夫をして、ネズミからチーズを守る。
よく見かけられたのは、天井の梁からロープで板を水平に宙づりにしてその上にチーズを置く。
ロープの途中にトゲトゲの木の枝の葉をしばりつけてある。床からはネズミはジャンプしても届かない。
ロープを伝わっておりてくるネズミはトゲのネズミ返しで引き返す。

横浜駅イタリアン・レストラン・エルスウェーニョの炭火焼キッシュは、卵と生クリームを混ぜてすこし泡立て、グルイエールチーズをズッキーニとトマトと一緒にパイ生地の中へ流し込み、釜の中で焼く。
パイ生地が香ばしく焼け、卵がふんわりとふくらみ、切ると熱い湯気と香りが広がる。

ビッキーも思いのたけを語って、落ち着いてきて、
熱々のおいしいキッシュを味わったのであった。

第九話 おわり

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