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横浜駅イタリアン・レストラン・エルスウェーニョでのビッキーとユーリのグルメ探訪(十)
ユーリも映画が大好きである。
何年か前、テレビのロードショーでみた「ローマの休日」でのオードリーヘップバーンのかわいいこと。
ローマの美しい街で美男美女のカップルが楽しい出来事をくりひろげる。
「ひまわり」を見た時は涙が止まらなかった。
戦争で不明になった夫のマルチェロ・マストロヤンニを
ソフィア・ローレンがイタリアからロシアまで捜しに行く。
やっとつきとめた夫の消息。ロシアでの新しい家庭、ホームの遠くにいとしい夫の顔をみとめたソフィア・ローレンの顔。
遠くからはっとして見つめあう。
ソフィア・ローレンの美しい顔が悲しみでだんだんくずれてゆく。
耐えきれず列車へ飛び乗り泣き崩れる。
全世界を涙の洪水でおおったシーンである。
「ブラザー・サン・シスタームーン」は、
もう一人のキリストと呼ばれたサント・フランチェスコの生涯の物語だ。
イタリア・トスカーナ地方、ウンブリアのアッシジの裕福な家庭で生まれたフランチェスコは、大病を機にイエス・キリストの本当の教えを真実の道に目覚める。
家を捨て、父、母を捨て財産を捨て、一人廃墟の教会の意思を摘んで再建に務める。
「鳥は紡がず、織らず、はたらかず、神が養う。」
美しい母親以外は人々はフランチェスコは気が狂ったとうわさした。
が、やがてフランチェスコの人柄と考えとその行動に賛同して従ってゆくものが、一人、二人とふえてゆく。
トスカーナの大自然が美しい。
黄金の麦の波の中で貧しい農夫が食べかけの自分のパンをフランチェスコに差し出す。
フランチェスコは少しちぎって残りを仲間に渡す、仲間も同じようにちぎって隣の人に渡す。
みんなにゆきわたる黄金の大自然。男たち。美しい世界。
フランチェスコに会ったローマ法王は、
「あなたは真実の人だ」
とフランチェスコの脚に口づけし
「真実の教えを広めてください」と言う。
美しい物語だ。美しい大自然。
美しい音楽は吟遊詩人ドノバンだ。
横浜駅イタリアン・レストラン・エルスウェーニョの個室で今度はユーリが語っている。
ビッキーはワインを飲みながらふんふんと聞いている。
フランチェスコの話は聞いたことがある。
伝説の聖人だ。ゼッフィレッリの他にロッセリーニの映画にもある。
こんどゆっくり見てみよう。
とりあえずワインと生ハムだ。
ワインはトスカーナのカルミニャーノ。
日本ではあまり知られていないが、トスカーナの古典的ワインだ。
力強く豊かな味わい。
フランチェスコはこのようなワインを飲むことがあったのだろうか?
そしてここにあるプロシュートのような食べ物も。
次の料理はアヒージョ。イスパニアの家庭料理で土鍋にオリーブ油を入れて、にんにくで香りづけし、肉、エビ、魚、野菜などなんでも煮込むことができる。
日本の鍋料理と同じでだし汁がオリーブ油となる。
横浜駅イタリアン・レストラン・エルスウェーニョでは、にんにく、アボガド、ナス、トマトそしてオリーブの実をオリーブ油で煮込む。
そしてカメリーナ。アヒージョの主役はパンである。
イスパニアの人達は、カメリーナのいとこともいえるあの堅いパンにいろいろな味と香りのオリーブオイルをつけて食べて暮らしてきたのである。
第十話 おわり