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横浜駅 イタリアン・レストラン・エルスウェーニョでのビッキーとユーリのグルメ探訪(四)2015.12.04

横浜駅 イタリアン・レストラン・エルスウェーニョでのビッキーとユーリのグルメ探訪(四)

ビッキーとユーリは横浜駅イタリアン・レストラン・エルスウェーニョが好きで好きで、たまらなくなった。お店の人たちともなじみになってきた。

ビッキーとユーリが横浜駅から歩いて
イタリアン・レストラン・エルスウェーニョを訪れた時
今回もいつもの女性が迎えてくれた。
「こんばんは、いらっしゃい。ユーリさん今夜はとてもすてきなワンピース。よくおにあいだわ。」
まるで自分の実家に帰ってきたような感じだ。
今夜は入ってすぐ左にあるこじんまりした小部屋で二人だけの空間を楽しむ。
床のテラコッタの濃い茶色が落ち着きをかもし出す
白いしっくいの壁が部屋を丸く囲む。
江野がやって来た。
「ビッキーとユーリちゃん、仲がよくていいねぇ。今日は何にする?」
と気さくに声をかける。
「この生ハム四種盛り合わせと今夜は白ワイン、それからペペロンチーノがいいかな。」
とビッキーが注文する。
ペペロンチーノと問いて江野はちょっと意外な気がしたと同時に少し緊張した。
ペペロンチーノほどイタリア料理人を悩ます料理はないのだ。
ともあれ、まずは白ワイン。
生ハム四種盛り合わせに負けないような白ワインならイタリアではガヴィ・ディ・ガヴィがいいだろう。
軽めでさわやかでフレッシュな味わいのイタリアンという通念がまかり通っているが、このガヴィはさわやかさの中に豊かで濃厚な味わいが広がる。
「おいしい」
とユーリ。
「白ワインもなかなかいいな。」
とビッキー。
四種類の生ハムが一皿に盛られてきた。
「どれもおいしそう、どれから食べようかなあ」
とユーリが言う。
「そうだ、この自家製パンと一緒に食べよう。パンもください。」
パルマ産プロシュート、超熟プロシュート、幻のクラッテロ、そしてイベリコの四種類である。どれもおいしく、そして味わいや香りが違う。
熟成プロシュートは今回初めて食べる。
普通、パルマ産プロシュートは12ヶ月熟成だが、この熟成生ハムは24ヶ月熟成させる。
12ヶ月プロシュートのフレッシュな肉の味わいに対してやわらかく濃厚な味だ。
本当は36か月の超レアな超熟プロシュートも仕入れたかったのだが、今年は完成しなかったそうだ。
それほど36ヶ月熟成は困難なのだ。
それには地球環境の変化という要因もある。
人工的飼料で育った豚はとうてい36ヶ月の熟成には耐えられない。
自然の純粋なものだけを取り入れて育つ豚でなければ。
しかしながら、その自然そのものが汚染されて生きたとしたら?食べるものだけではない、飲み水も、呼吸する空気も生命に大きく作用する。
おなじ問題はチーズの熟成でも現れている。
かつては、3年熟成、5年熟成のパルジャミーノ、レッジャーノチーズが存在したが、今はそれができない。
原因は牛の乳が弱ってきて、長時間の熟成に耐えられないのだ。
生命が弱る。
これが最も大きな問題だ。
人間も例外ではない。
便利な環境、快適な環境、ぬくぬくとした環境、あるいは電磁波、あるいは生活のスピード、あるいは膨大な情報量。
こういうものが生命の力を弱らせるとしたら?
………
パンが来た。
江野が愛情を込めてカメリーナと呼ぶトスカーナパンだ。
ユーリは「横浜駅イタリアン・レストラン・エルスウェーニョ、マスターの小説」の中にあるカメリーナの物語を読んで感動した。
「わたしもカメリーナになりたい。カメリーナのように、すばらしい人間に巡り会いたい。」
ガヴィ・デ・ガヴィ、四種類の生ハム、カメリーナ、最高の取り合わせである。
お互いが、すばらしい味を持ちながら、なおかつお互いをひきたてあう。
イタリアで最も食べられている料理であるスパゲッティペペロンチーノは、スパゲッティ、にんにく、オリーブ油、ペペロンチーニ・こと赤とうがらし、のみで調理される、非常に簡素で単純な料理である。
こういう料理こそむずかしい。
まず水。水の高度、クラスターの大きさ、新鮮さ。お湯の量、日の強さ、スパゲッティを入れた瞬間でも100度を下がらないようにたっぷりの湯、強い火が必要だ。
アルデンテという茹で加減。
時間で計るのではない、感触で計るのだ。
オリーブ油は熱して、にんにくの香りとオリーブ油の香りと赤とうがらしの香りとベストマッチングの状態の時、スパゲッティが茹で上がり、両者が合わせられ乳化してからみ合う。
そして塩、
そして胡椒、
迅速な手際が必要だ。
塩、胡椒。これほど料理を左右するものはないだろう。
種類もたくさんある。味も違う。
だが最も重要なのはその量加減である。
現代の料理、食べ物は味をはっきりとさせるためか、総じて塩、胡椒の量が多いように江野には思われる。
塩と胡椒は素材の味をひきだすためのものであって、
それ自体の味は隠れていなければならない。
塩は、100年ほど前までは日本では貴重品であった。
岩塩のない日本の特に山奥では塩一袋と子供が交換された。遠浅の海岸の塩田で、海の水を取り入れて干して塩を取る方法しかなかった、
土俵や神棚など神聖な場所に塩は置かれていた。
胡椒もまた貴重であった。
ヨーロッパはインドや中国の胡椒を得るため、あらゆる犠牲を払って、シルクロードを旅した。
それほどまでに人間にとって必要なものだったのだ。
ビッキーとユーリのテーブルに置かれたスパゲッティペペロンチーノは熱々の湯気と共に、
にんにくとオリーブ油の香りを部屋中に放っていた。
小麦粉のいい香りもする。
「おいしい。ほんとにおいしいスパゲッティ。ただの白いスパゲッティだけにみえるのに、こんなに豊かな味なんだわ。」
とユーリが感嘆する。
香り高いオリーブ油のソースはカメリーナにもよく合う。
横浜駅イタリアン・レストラン・エルスウェーニョの夜は今日も更けていく。
奥のほうでジャズの生演奏も始まった。
今度は、ビッキーとユーリは離れた小部屋で生演奏の音を聞きながら、二人だけの時間を過ごす。
愛を語らいながら…。
第四部 おわり

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