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エルスウェーニョ 横浜駅ジャズアンドイタリアンレストラン
マスターファンタジー
ビッキー・ユーリのユルメ探訪 十七話
ビッキーとユーリは、今オルフェがいた岩の上にいる。
オルフェのことを思って二人とも泣いている。
「きっと、お星さまになっているよね。」
「そうだね。」
そうしてしばらく二人は泣いていた。
すると山の上の方から大きな岩がゴロゴロころがって落ちてくる。
上から巨人が走って追いかけてくる。
「うわーあぶない。」
巨人は叫んだ。
大きな岩がころがってビッキーとユーリがいる岩をはねとばして下へ落ちてゆく。
ビッキーとユーリはオルフェと同じように空中に飛ばされて深い谷へ落ちていった。
「きゃー、たすけてー。」
「うわーおちるう。」
「うわー、きゃー。」
と空中を落ちたと思ったら、
柔らかい羽毛ふとんのようなものの上に落ちた。
柔らかくて暖かい。
そばに老人が立ってる。
「ビッキー君、ユーリちゃん、悪い、悪い。お迎えが遅れちゃって。」
鬼共をこらしめて時間がかかってしもうた。
わしは役行者、これは空飛ぶ円パンカメリーナだ。
わしのように300年ほど修行すると空も自由に飛べて、
雲のように快適なカメリーナも自由に操れるようになるんじゃ。」
ユーリはカメリーナをさわってみる。
「おいしそう。」
「そうそう、カメリーナのどの部分もいろいろなケーキになっとるんで、
どこでもすきなように食べていいぞ。」
「うわーい。いただきます。」
ビッキーとユーリは回りにあるカメリーナのケーキをバクバク食べているうちに
カメリーナはフワフワと谷を上がっていった。
だんだんに山の頂上に近づいていくと
さっきの巨人が、さっきの大きな岩をゴロゴロ転がして登っている。
「こんにちは役行者殿。
ビッキー君、ユーリちゃんさっきはごめんね。岩がぶつかってしまって。
わしはシジフォス、山の上へ岩を転がして登ってゆくところだ。
山頂へつくと岩はさっきみたいにゴロゴロころがって落ちてゆく。
つまりまったくムダなことをくり返しているように思われるけど、
わしは楽しくてしょうがない。
岩をころがして登るにも力がいるし技術もいる。
山頂についたらどっちへころがるかも楽しみだ。
だいいち頂上についたら終わりだったらその後なにをする?
何度も何度も挑戦できるから人生が楽しい。
アルベールカミュ殿は異邦人の中でわしのことを書いている。
ムルソーはわしだ。人生は不条理なり。」
そう言ってシジフォスは岩を山頂まで転がしていき、
そして岩がゴロゴロところがって落ちてゆくのを、
「キャッホー。」
と叫びながらまた追いかけていった。」
「変な人ねえ。」
とユーリ。
「そうだなわかんないひとだな。」
とビッキー。
役行者はニコニコ笑っている。
…
空飛ぶ円パンカメリーナはビッキーとユーリと役行者を乗せてフワフワと飛んでゆく。
下は岩山が続いている。
大きな洞窟があってその入口で巨人がひざまづいて洞窟に向かって語っている。
プロメテウスコングだ。
洞窟はゴジラの巣だ。
「ゆるしてください。ゴジラさん。
私が人間どもに原爆と水爆をもたらしたばかりに、あたなたをそんな姿にしてしまった。
南太平洋の海のそこでタツノオトシゴとしてひっそりと暮らしていたあなたを水爆実験が直撃し、
あなたを巨大な怪獣にしてしまった。
みんな私が悪いんです。人間どもは太平洋戦争の時も科学の進歩という名のもとに
広島と長崎に原爆を落とし、たくさんの母親と子供たちを焼きこげにしてしまった。
なんの必要があったのだろう?そしてその反省もないまま、
原爆、水爆を開発し、どこかしらで爆発させ世界中を放射能だらけにしてしまった。
漁船の漁師たちも死の灰をかぶり犠牲となった。
そしていちばんの犠牲はあなただ。
怒り狂ったあなたは世界中を暴れ回り、
人間どもに恐れられ、最強最悪といわれているが、
つい最近まではチェルノブイリや福島で原子力発電所が爆発し、放射能だらけになりました。
まったく制御不能にならないと、ことの大きさに気が付かないのが人間どもです。
科学技術が自然をコントロールできると思いあがっているのです。
それもこれも私が人間どもに原爆、水爆を与えたからに他なりません。」
ドーンガーンと地響きがきこえてくる。
ゴジラがやってくるのだ。
「グァアオー。」
きたーゴジラだ。逃げろー。
「おう、キングコングプロメテウスじゃないか
久しぶりだな。」
ゴジラは話かかける。
「まぁ、おまえ一人が悪いんじゃない。
中にはいってお茶でも飲みながら昔の話でもしようぜ。」
ゴジラとキングコングプロメテウスは洞窟の中へ去っていった。
(ビッキーとユーリのユルメ探訪 十七話 おわり)