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エルスウェーニョ(横浜駅イタリアンレストラン)マスターファンタジー ビッキーとユーリのユルメ探訪(12)2016.01.31

エルスウェーニョ(横浜駅イタリアンレストラン)マスターファンタジー
ビッキーとユーリのユルメ探訪(12)

ドドドドドドドドド
ケンタウルス ノートンは走る。
ビッキーとユーリを乗せて。
道は一本道。
向こうから二台のオートバイと車が一台来る。
ビュッとすれ違いざまに手を振った。
お互いに振り返って後姿を追う。
今のはホンダCB750と500.
乗っていたのはポールと西。車はダンサーの女だ。
西は日本からヨーロッパ耐久レースに参戦する。
スポンサーの金持ちの娘、小川ローサといっしょだ。
レースで敗れて、恋人にも捨てられて
失意のうちにオートバイに乗って日本を目指す。
彼に残されたものはオートバイ一台のみだ。
ヨーロッパを走る。
街のカフェで休んでいると、
店の前に750㏄が止まっていて男がおりてきた。
男は西の500をポンとたたいて、店に入ってきて西の隣にすわる。
「オートバイが好きか?」と西が聞く。
「たまらなく好きだ」ポールが答える。
「おれもだ」と西。
「君のか?あれは」とポールは外に顔を向ける。
二人は道連れになった。
ポールはチベットの理想郷を目指していた。
イスタンブールで
車で一人の女をひょんなことで助け、
三人道連れになる。
女はアラブの富豪のもとへ嫁に行く途中だ。
オートバイ二台と車が走る。
周りは砂漠だ。
道は一本道。
三人の他にはいない。
ドノバンの歌が聞こえる。
走る。走る。
くる日もくる日も走る。
ある日三人は、泉に休んでいる。
ポールと西は水浴びして寝ている。
女は思う。
「神さま。私、もう二か月も男に抱かれていません。私は健康な女よ。
私はどっちもすきなんだけど…」
女は小石を二人に投げ
泉に入っていゆく。
女の気持ちを察したポールと西は
オートバイで決着をつけようということになった。
西は元レーサーだ。
ポールは「おれはラフに強い」という。
「バカいえ」と西。
750と500は競争だ。
速い。
砂漠の道と二台のオートバイが疾走する。
走ってきた二人を女は待ちかまえて
ビンタをくらわす。
「バカにしないで!」
女心はよくわからない。
それから女は一人で車で旅出つ。
ポールと西の
二台はアラビアを走る。
ある街でポールと西は呼び止められて
街の男に連れてゆかれる。
そこにはボロボロに傷ついて放心状態の女が介抱されていた。
砂漠で水を飲んでいたところ
ベトヴェンにとがめられたのだ。
数人の男に囲まれて
女は銃を男たちに向けた。
銃はたたき落とされ女は暴行された。
その後、街の人たちに助けられたのだ。
しばらく女の回復を待って
三人でまた走り始める。
750に二人乗りだ。荷物もたくさん積んである。
三人で愛を確かめ合う。
走る。走る。
くる日のくる日も走る。
ある日、女は750から落ちて倒れた。
そして死ぬ。
砂漠のど真ん中に三人きりだ。
女は死んでしまった。
砂漠の中で木を組み上げ
女を横たえて火をつける。
燃え上がる火。
燃える夕日。
日は沈み、日は昇る。

そしてまたポールと西は走る。
失われた愛。
失われた夢。
それでも走る。
還らない時。
還らない青春。
それでも走る。
チベットへの岐路で
走りながら二人は別れる。
ポールは北へ、西は東へ。
そして一人で走る。

             第十二話おわり

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