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エルスウェーニョ(横浜駅イタリアンレストラン)マスターファンタジー
ビッキーとユーリのユルメ探訪(10)
ドドドドドドドドド
ケンタウルス ノートンは走る。
ビッキーとユーリを乗せて。
道は一本道。
向こうから一台のオートバイが来る。
大きなオートバイだ。
女が乗っている。
美しい女だ。
ビュッとすれ違いざまに手を振った。
お互いに振り返って後姿を追う。
今のはハーレーダビッドソン1200㏄デュオグライド。
黒く大きい。
乗っていたのはマリアンヌ・フェイスフル。
細身のレザーのつなぎ姿だ。
あの胸にもう一度…
黒い雄牛が美しい女を乗せて走る。
かつての男のもとへ。
…………
レベッカは結婚したばかりだ。
夫は教師でパッとしない。
それなりに幸せなのかもしれないが
レベッカはなんとなくつまらない。
そんなレベッカのもとへ贈り物が届く。
レイモンからだ。
贈り物はアメリカ製ハーレーダビッドソン1200.
ヨーロッパには数台しかないしろものだ。
レベッカの脳裏にかつての日々がよみがえる。
まだ娘の時代にオートバイでやってきたレイモン。
モトグッチファルコーネの後ろに乗って遠出した。
冷ややかな風、飛んでゆく景色。
アランドロンの体にしっかりつかまって二人きりで
新しい世界を走る。
アランドロンからオートバイの運転の手ほどきを受ける。
そして恋のてほどきも。
降りしきる雪の中をノートンアトラスに二人乗って走る。
「私の気持ちわかってる?」
山道を登り、雪の中で愛し合う。
……………
今、寝ている夫の横から起き出すレベッカ。
素肌にそのままレザーのつなぎをまとう。
ハーレーダビッドソンにまたがる。
そして走り出す。
レイモンのもとへ。ふりかえる。「抱いてくれたら、いかなかったのに」
黒い雄牛が走る。
美しい女を乗せて。
かつての男の胸へ。
道をどんどん走る。
青春の日々が脳裏をかすめる。
どんどん走る。
道ゆく人。
カフェの人。
橋。
草原。
街。
どんどん走る。
過ぎ去った愛の日々が脳裏によぎる。
走馬燈のように現れては飛んでゆく。
すごいスピードで走る。
前の車を追い越しにかかった。
対向車が来た。
追い抜いてから避ければいい。
スピードをあげた。
そこにオイルが・・・・
目の前にトラックの大きな荷台がせまった。
そこに描かれたデュオニッソスの顔が大きく迫ってきた。
………………
原題は「オートバイ」
フランスのマンディアルクの薫り高い文学作品だ。
第十話おわり
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