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横浜駅ジャズ&イタリアン エルスウェーニョマスターの小説 横浜駅ジャズアンドイタリアンレストラン2015.12.26

横浜駅ジャズ&イタリアン エルスウェーニョマスターの小説 横浜駅ジャズアンドイタリアンレストラン

(八)ジョンとカーリー
ジュン、スキスキ、ワンワン。
カーリー、スキスキ。
ジュン、スキスキ、ワンワン。
カーリー、スキスキ。
カーリーはシェパード犬。
訓練を受けてかしこい犬。
ジュンが学校から帰ると、二人は毎日野山を駆け回るのでした。
ジュン、スキスキ、ワンワン。
カーリー、スキスキ。
今日はどこへ行こうか。
裏の山へ行こう。
ジュン、スキスキ、ワンワン。
カーリー、スキスキ。
どこまでもいっしょに行こうね。
どこまでもぼくたちはいっしょだ。
ジュン、スキスキ、ワンワン。
カーリー、スキスキ。
ジュン、スキスキ、ワンワン。
カーリー、スキスキ。
カーリー、そらいくぞ。
ジョンがボールを投げるとカーリーはまっしぐらにそれを追いかけ、
ワンバウンドしたボールをジャンプしてバクっとくわえ、ジョンのところへ持って帰ってくるのでした。
カーリー、そらいくぞ、真冬の地にボールを投げ入れると
ザブンとカーリーは水に飛び込み、
犬かきで泳いでボールをとらえ、ジュンのところへ持っていきます。
二人は毎日このようにして暮らしていました。
ジュン、スキスキ、ワンワン。
カーリー、スキスキ。
いつまでもいっしょにいようね。
いつまでもぼくたちいっしょだ。
ジュン、スキスキ、ワンワン。
カーリー、スキスキ。
あれ、なんだかカーリーの様子が変だ。
すこし元気がないし、おなかあたりをしきりに気にしている。
カーリーどうした?
「なんでもない。」
その日以来、近所のオス犬どもが、カーリーをつけまわすようになりました。
カーリーは大きくて強いので、オス犬どもを追っぱらいます。
ジュン、スキスキ、ワンワン。
カーリー、スキスキ。
ジュン、スキスキ、ワンワン。
いつまでもいっしょにいましょうね。
ジュン、スキスキ、ワンワン。
カーリー、スキスキ。
ある日りっぱなオスのシェパード犬がやってきました。
カーリーもまんざらでもなさそうです。
こんどは三人でいっしょに、野山を駆けまわって暮らしています。
楽しい日々。
そのうちそのシェパードはいなくなりました。
また二人で駆けまわります。
ジュン、スキスキ、ワンワン。
カーリー、スキスキ。
やがてカーリーのおなかが大きくなってきました。
ジュンにはなんのことかわかりません。
ジュン、スキスキ、ワンワン。
カーリー、スキスキ。
ジュン、スキスキ、ワンワン。
いつまでもいっしょにいたい。
カーリー、スキスキ。
ジュン、スキスキ、ワンワン。
ある夜ジュンの寝ている床の下でゴソゴソ音がしました。
朝、起きてみるとカーリーの子犬が十匹生まれていました。
カーリーは自分の犬小屋ではなく、ジュンのそばでお産をしたかったのです。
子犬たちはカーリーのお乳を飲みながらスクスクと育っていきました。
やがて、それぞれもらわれてゆきました。
また二人で駆けまわります。
ジュン、スキスキ、ワンワン。
カーリー、スキスキ。
ジュン、スキスキ、ワンワン。
いつまでもいっしょにいられたら。
カーリー、スキスキ。
ジョン、スキスキ、ワンワン。
月日がたちました。
ジュンも中学生になり、勉強にスポーツにいそがしくなりました。
いままでのようにカーリーと駆けまわってばかりはいられません。
カーリーも年をとりました。
カーリーは遠いところへもらわれてゆくことになりました。
ジュンとカーリーの最後の日。
「いつか、こんな日が来ると思っていたわ、ジュン。」
カーリーはそっと涙を流しました。
「あなたと二人幸せな日々だったわ。でもわたしはもう年。あなたはこれからたくさん勉強して、りっぱな大人になってゆくでしょう。大人になったあなたにまた会いたいわ。さようなら。さようなら、ジュン。」
ジュンは涙をこらえながら、カーリーを見送った。
「泣くもんか。泣くもんか。」

(第八話 ジュンとカーリー おわり)

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