20世紀の半ばごろまで、カメリーナはイタリア中央部トスカーナの上女王であった。
宗教的色彩の色濃く残るこの地方の村々では、広場に共同焼釜(フォルノ)があり、
村人は週1度だけカメリーナを焼く。
日曜日の朝、村の主婦たちは各家庭に代々続くマーティア(パンの種)からこねた生地を大きく丸めナイフで印を入れて広場に集まる。
広場には直径5メートル高さ2メートルほどの石で積み上げられたドーム状の窯があり、その中に周囲に沿って薪が並べられている。
イエス・キリストへの祈りの言葉とともに、窯職人フォルテノの手によって火が入れられて薪が燃え盛る。
1時間ほどして石が熱く白く変色した頃、炉床にパンの生地を並べる。