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エルスウェーニョ(横浜駅イタリアンレストラン)マスターファンタジー
ビッキーとユーリのユルメ探訪(6)
ドドドドドドドドド
ビッキーとユーリを背中に乗せて
ケンタウルス ノートンは走る、走る、走る。
草原を突っ切り砂漠を走る。
遠くに白い頂が連なる。
かつて三蔵法師と孫悟空たちが通った道だ。
ドドドドドドドドド
遠くに土煙が上がっているのが見える。
狼の大群が走っている。
近づくとオオカミと見えたのはモンゴルの騎馬軍だった。
大軍だ。
ドドドドドドドドド
地響きがこだまする。
ケンタウルスは後ろから騎馬軍を追い越してゆく。
どんどん追い越す。
まだまだたくさんいる。
大軍だ。
やっと先頭が見えた。
剣を振りかざし大声で叫んでいる。
ジンギス・カーンだ。
ケンタウルスはジンギス・カーンに並んだ。
「おお、ビッキー君にユーリちゃん、ケンタウルスのノートンさん。
ここでお会いできるとは。
わしの天の馬もさぞうれしかろう」
「こんにちはカーンさん、天馬さん
おうわさはかねがねきいておりました。」
とノートン。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
「ケンタウルス ノートンさん、いつかお会いしたいものだと思っておりました。」
と天馬もニッコリ。
かつてソーホーと走った伝説の馬だ。
「我々は走ることが無上の喜びですな。」
天の馬に乗ったジンギス・カーンと
ケンタウルス ノートンに乗ったビッキーとユーリは
すごい速さで並んで走りながら、
大声でいろいろな話をした。
「ビッキー君、ユーリちゃん、
実はわしも君たちと同じ国の生まれじゃ」
「えー、本当ですかあ」
「父上は源氏の頭領、源の義朝、母は常盤御前じゃ。
平清盛に敗れて、父と兄者たちは死んだ。
頼朝の兄貴は伊豆に流され、わしは鞍馬に預けられた。
子供の頃は牛若丸と呼ばれて剣術が達者じゃった。
京の四条大橋での弁慶との勝負でわしの名は上がった。
剣は力ではない。
平家にあらずは人にあらずの世であった。
源氏の血を引くわしは弁慶たちと奥州藤原氏のところへ逃れた。白河の関より北は別の国で独立していた。
藤原氏は平泉で金の寺や館を立ち並べ、
栄華を誇っていた。黄金の国ジパングじゃ。
そのころ金はいくらでもあった。
安倍氏と津軽十三湊の安東氏も同族じゃ。
十三湊は大陸と交易が盛んで、大陸の人たちも多くにぎやかな都のようであった。
関東で兄の頼朝が源氏の旗を上げ
わしも馳せ参じ、源氏の兵を率いて西に向かった。
京で木曽義仲を追い払い、須幡の一の谷の逆落としで平家の大軍を打ち破った。世の人は信じられなかっただろう。
屋島でも奇襲で勝ち
いよいよ檀の浦の決戦をひかえたころ、
わしは、弟の平清経に密使を送った。
わしの母が清盛との間に産んだ子だ。
「平家は減じる領西(九州)に逃れて馬を養え」と。
清経は源平の決戦の前、宇佐神社に神託をうかがい、
平家が負けると受け、周防灘で入水自殺したと伝えられている。
敵前逃亡の汚名をかぶったのだ。
実はひそかに柳ヶ浦に上陸し、豊後の雄、緒方の養子として、同東の山の中に隠れておった。
毎夜、よとぎに訪れる村の女たちに種を残しておったのだろう。
神託のとおり、わしは平家を海に沈めた。
船の戦いでは禁じ手の相手の水主を射殺しての勝利だった。
なおかつ天皇の母君である若く美しい建礼門院を水から引き上げて介抱するうちに関係してしまった。
若気の至りじゃ。
源平の戦では百戦錬磨のわしじゃったので庶民には人気が高かった。
源家では不評をかった。
京で判官として貴族のようなきらびやかな生活をしておったのもいけなかった。
兄の頼朝はわしを恐れておった。
天性のわしの剣術、馬術、戦術の才を恐れて、
わしを討ちに兵を送った。
わしは京を逃れて、摂津(大阪)渡辺から船で領西をめざした。
清経に合流するもくろみもあったが、
大嵐で船は紀の浜に打ち上げられた。
なんという不運。
それからは不運につぐ不運であった。
興福寺でしばらく滞在し蔵王崇で妻の静香御前と別れた。
そこから先は女人禁制だ。
静香は身ごもっていた。
申し訳ないことだ。
どうしようもない状態だったとはいえ
後悔。後悔じゃ。
白山修験、立山修験を隠れながら春を待ち
奥州に向かう。
わしの姿があからさまになったのは北陸の
富 氏の前のみ一度きりであった。
焼けた東大寺再建の為の勧進の行者として
弁慶に引き連れられた我々は富 氏の尋問にあう。
富 はわしのことを見抜いたうえでおすみつきの勧進と共に行かせてくれた。
第二の故郷 藤原氏のもとへたどりついた。
みんなが大歓迎してくれた。
もう安心。
わしは修験道の旅の間じゅう
反省しておった。
何がいけなかったのか。
わしほどの才能と勝利の実績を持ちながら
このような不遇をかこうのは、いったい何がいけなかったのか
だいたいわかってきた。わしは戦術、奇襲にたけていたが、
先を見とおす戦略というものがなかったのだ。
世の中が大きく変わる時代なのに
わしは公家になったつもりでいた。
平家や義仲と同じ間違いをおかしたのだ。
頼朝の兄者はそこが違う。
新しく世をつくりあげていくのだ。
わしは衣川で再起をはかっていた。
必ず恥と汚名をそそぐ
兄を見返してやる。
が、また不運にも頼りの藤原秀衡が死んだ。
鎌倉は奥羽に進軍して来た。
わしは安東水軍を率いて大陸へ渡った。
大陸でもわしの騎馬術、戦術にかなうものはいなかった。
奥へ進軍しモンゴルで天の馬を得た。
鬼に金棒だ。
わしの騎馬軍は無敵だった。
金(中国)を滅ぼし、元を築くころ
清経が合流した。
弟は平家追討が激しくなるにつれ
椎葉や五条の荘に逃れたが
まだ若く戦いの炎がくずぶったままだったので宗像水軍を率いて、大陸に渡り
わしのところへ合流して来たのだ。
わしらは良く語り合う。
大陸をすべて支配し尽したら
いつか故郷に錦をかざろうぜと。恥をすすがねばならん。
大船と大軍をひきつれて、
源家のど肝を抜いてやろうぜと。」
天の馬とケンタウルスはどんどん走る。
モンゴル騎馬軍もどんどん走る。
「ビッキー君、ユーリちゃん、
わしらはロシアへ向かう。
ここらでお別れだ。
ケンタウルスどの二人をよろしく頼む」
「カーンさん、ご武運を。
天の馬さんご活躍を。
さようなら。」
「さようなら。」
「さようなら。」
おわり