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エル・スウェーニョ 横浜駅ジャズアンドイタリアンレストラン ビッキーとユーリのグルメ探訪 35話 銀河鉄道の夜
高崎に出故一郎と白井二郎という武骨な兄弟がいる。
D51とC62の二台の蒸気機関車のことである。
「汽車汽車シュッポシュッポシュッポシュッポシュッポポ…」と歌われるように
蒸気機関車は真っ黒い煙と真っ白い商機をポッポッはき出しながら
ガシャガシャ大きな車輪を大きな棒で回しながらボッボッボッと走る。
石炭をガンガン燃やして水をグツグツ煮立ててその蒸気でピストンを押し下げて車輪を回す。
その力感あふれる走りが強い印象を与えるためいまだにファンが多い。
エネルギー革命、産業構造の変化により石炭エネルギーから電気エネルギーに変換していく1960年代を最後に姿を消した。
あらゆる面において蒸気機関車は電車にかなわないとされた。
1964年の東京オリンピックを境目にして日本もいままでののんびりとした時間からスピード時代へと突入していく。
スピード、高性能、効率、クリーンといったものが最優先され、これまでの生活が激変し多くのものが失われていった。
いろり。かまど。五右衛門風呂。ボットン便所。薪。炭。煤けた黒い天井や壁。ホタル。サンショウウオ。蒸気機関車。絹、麻などの天然素材の衣服。
科学の力を誰もが信じ、未来はクリーンで美しい豊かなものと期待した。そして半世紀が経った。
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現代は、我々が50年前に思い描いていた姿であるか?
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全国各地で蒸気機関車が走っている。あの煤だらけの真っ黒い機関車と黒く塗られた客車。
トンネルに入るとつぶつぶの煤の煙がブァーと入ってきて、客も煤だらけになる。
駅も、乗務員も、線路の近くの民家も、みんな煤で黒ずんでいる。
日豊本線は山が多いので三連の機関車で走る。阿蘇を越える豊肥本線では、前、後の二台の機関車で交互に後ろ向きに走ったりしながら峠を越える。
誰もがもっときれいでもっと速くなって欲しいと望んだ。
そして今、すべてがきれいで速くなった。
だが、なぜ今も蒸気機関車は走るのか?人間の生命、感性というものが蒸気機関車のようなものを求めるのかもしれない。
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ビッキーは蒸気機関車に乗ったことはない。でも乗りたいと思う。
同じく同世代に消えていった家族のいろりを囲んだ食事と団らん。おふくろの味。
インスタント食品と冷凍食品が世の中を覆い尽くす以前の手づくりの味。そういうものに触れたいと思う。
だから横浜駅 イタリアン・レストラン エル・スウェーニョの料理が好きなのだろう。
35話 終わり