陸と、自分の限界を悟ったアレキサンダーグレイトはギリシャに帰り、ディオゲネスを訪ねる。
無一物無尽蔵の哲人である。
ディオゲネスの樽の前に立ち、アレキサンダーはこう言う。
「ディオゲネス先生、私はアレキサンダーグレイトです。地上のすべてを得た者です。何かお望みのものがあればおっしゃってください。」
ディオゲネスは答える。
「そうか。ではそこを立ち去ってくれ。お前のおかげで太陽の光が遮られるのでな。」
アレキサンダーは
「この人は天の王の太陽と親しく語らっているのだ。地上の王の私など及ぶものではない。」
と悟って立ち去る。
だが立ち去るときに樽のそばにカメリーナをそっと置いていった。
ディオゲネスは後で置かれていったカメリーナを見つけてゆっくりと食べて味わったことだろう。
希代の哲人といえども食べることなしでは生きてゆけないのだから。