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エルスウェーニョ(横浜駅イタリアンレストラン)マスターファンタジー ビッキーとユーリのユルメ探訪(15)2016.01.31

エルスウェーニョ(横浜駅イタリアンレストラン)マスターファンタジー
ビッキーとユーリのユルメ探訪(15)

ドドドドドドドドド
ケンタウルス ノートンはビッキーとユーリを乗せて走る。
走る。走る。

「さあ、着いたぞ。ここが地の果て
この先は千尋の谷。誰も渡れない。
わしがいっしょに来れるのはここまでだ。
あそこに少年が三人遊んでいるから
友達になるといい。さらばじゃ」
「さよなら。ノートンさん」
「さようなら、ケンタウルスさん、ありがとう」

崖のそばに少年が三人いる。
ビッキーとユーリが近づくと
一人の快活な少年が二人をニコニコと迎えてくれた。
あとの二人は無口でユーリをチラッと見て
恥ずかしくて下を向いてしまった。
「こんにちは」
「こんにちは」
「ビッキー君とユーリちゃん。ようこそ
ぼくはニーチェ、彼はドストエフスキー、
もう一人はムソルグスキー。
ぼくたち、それぞれ、哲学と詩と音楽を
勉強してたんだけど別々に勉強しても世界は変えられないと気が付いたんだ。
哲学、詩、音楽、これらはもともと同じもの。
もう一度力を合わせていっしょになって進まなくては。
それで三人集まって、それぞれの三本の糸を
より合わせて網をつくったんだ。
この千尋の谷に渡して向こうの世界、新しい世界へ、網を渡して、
谷の上を網渡りして遊んでいるところさ。」
「へえ、すごいなあ。こんな谷を渡るのか」
「こわあい」
「平気さ。まっすぐ前だけを見て、ほれこうやってバランスをとって渡るんだ。」
ニーチェ君は網の上をスタスタと歩いてみせた。
「ビッキー君は僕の後について僕と同じように渡ればいい。ユーリちゃんは女の子だから
ドストエフスキーとムソルグスキーの間にはいって、手をつないでもらって渡るといい。
さあ、いくよ。」
ドストエフスキーもムソルグスキーも顔を真っ赤にしてユーリとなかなか手をつなげない。

「ほおら、恥ずかしがってないでちゃんと手をつないで。ユーリちゃんを安全に向こうまでわたすんだぞ」
こうして、ニーチェ、ビッキー、ドストエフスキー、ユーリ、ムソルグスキーの
五人の子供たちは一本の網をゆっくりと渡って
向こうの世界、まだ見ぬ新世界へ
深い深い谷の上を渡っていった。

             第十五話おわり

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