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エルスウェーニョ(横浜駅イタリアンレストラン)マスターファンタジー ビッキーとユーリのユルメ探訪(5)2016.01.17

エルスウェーニョ(横浜駅イタリアンレストラン)マスターファンタジー
ビッキーとユーリのユルメ探訪(5)

ドドドドドドドドド
ケンタウルス ノートンは走る。
ドドドドドドドドド
速い
ドドドドドドドドド
草原を突き抜け砂漠を走る。
ドドドドドドドドド
遠くに白い山の頂が連なる。
ドドドドドドドドド
「ビッキー君、ユーリちゃん、乗り心地はどうかな?」
「もう最高。」
「ステキ!大好き!」
ドドドドドドドドド
走る。走る。
ドドドドドドドドド
「わしの孫娘たちがお世話になっておる。
お礼にわしがあんたたちを地の果てまで
乗っけていってやろう。」
ドドドドドドドドド

草原を走る三人の耳に
遠くからウォーという地鳴りのような声が聞こえてきた。
太鼓がドンドンと鳴り、鐘もシャンシャン鳴る。
音はだんだん近づいてくる。
うわあ、すごい。戦さだ。
何万人の男たちが戦っている。
中央に城があって、城を守る兵士たちと
外から囲む兵たちが戦っているのだ。
すごい数だ。
ケンタウルスは小高い山に登って
ビッキーとユーリを乗せたまま、
戦いの様子を見守ることにした。
始皇帝なきあと
楚の項羽は不敗の覇王として天下を取る勢いであった。
しかし漢の劉鄭が立ちふさがる。
両雄はしのぎを削って戦う。
今、漢の何万という大兵力が楚の城を囲む。
楚の兵は精鋭だ。
戦いは続く。
ケンタウルスたちから城の中の部屋の様子を見るとことができる。
大きな男が立っている。
頂羽だ。

美しい姫がその横にいる。
そして頂羽の愛馬、騅。
夜になった。
戦いは続く。
おや、歌が聞こえてきた。
楚の歌だ。
たいまつを持って城を囲む漢の兵が
楚の歌を大合唱する。
楚の兵たちは自分たちの国の歌が聞こえてきて浮き足立つ。
我々のふるさとは敵の手におちたか。
やがて敗走がはじまる。
楚の兵は次々に逃げ出した。
怒涛のごとく人が走る。
城に頂羽と姫と馬だけが残された。
漢の兵たちは城に迫ってきた。
もはやこれまでか。

力 山を抜き
気 世を蓋ふ 
時に利あらず
騅 逝かず
騅の逝かざるをいかにすべき
虞や虞や
なんじをいかんせん

「大王さま、まあ、おちついてくださいまし。
私が舞を舞いますので
お酒を飲んでゆっくりとごらんくださいませ。
取り囲んだ漢の兵は歌を歌いながら見守っている。
虞姫は大王におしゃくをし
二人でくみかわして、にっこりと笑い
舞いはじめた。
漢の人々が歌う楚歌に合わせて舞う。
美しい。
大王も漢の人々もかたずをのんで見守る。
美しい。ため息がもれる。
すべての人々が見とれて虞姫の舞う姿を追う。
頂羽はふと漢の観客たちを見回し
その中に劉邦を見とめて、
「うぬっ」と立ち上がった。
その瞬間、
虞は舞いながら右手で頂羽の刀をすらりと抜き
自分の首筋にあてて引いた。
ほとばしる血、倒れる虞美人。
「虞!」
頂羽は叫んだ。

漢の観客たちの間から
「おお…」というため息がもれる。
観客がすべて涙ぐんでいる。
「虞!虞!」
と叫びながら頂羽は虞の横に膝をついたが
顔を上げ、劉邦と漢の兵たちを見回し、
「さらばじゃ」
と城に火を放った。
漢の兵もみんなたいまつを投げる。
城はみるみる燃え上がり
炎の幕に覆われた。
・・・・・・・・
ビッキーとユーリがわんわん泣いている
ケンタウルスのノートンもヒーン、ヒーンヒーンと泣く。
旧友の騅君の運命の時でもあった。
         第五話おわり

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